敷地内にある海洋科学技術館では、JAMSTECが所有する船舶の模型や深海生物の標本が見られます。有人潜水調査船「しんかい6500」の実物大模型を前にした説明では、人が乗り込む球状の船室は深海の圧力に耐えられるようにチタン合金でできており、3つののぞき窓には水族館の巨大水槽と同じメタクリルというアクリル樹脂が使われているそうです。内径は2mと狭く、3人が乗船し、約8時間にも及ぶ深海での調査をする苦労がわかります。
JAMSTEC本部は横須賀港に面しており、専用岸壁からは米海軍や自衛隊の船舶も見えます。しかしJAMSTEC所有の船舶は年間270日近くも調査のために出航しているので、この日は見られませんでした。その代わり、無人探査機の整備場で、深海に潜水するさまざまなロボットを見ることができました。無人探査機「かいこう7000Ⅱ」は、親機と子機があり、子機には高性能カメラとともに、深海の生物などを採取できるアームがついています。今回の視察では、今までメンバーとして勉強する機会のなかった新たな分野の知識を得ることができました。
国土が狭く、資源が少ないために100%近くを輸入に頼っている日本、ところが島国をぐるりと囲む海、いわゆる排他的経済水域の面積は、世界第6位とのこと。海底資源のメタンハイドレートは、メタンガスと水が、気温が低く圧力がかかる環境で氷のような状態になったもので、海底下にメタンハイドレートが1m³あると、メタンガスは170倍の170m³もあると考えられるそうです。JAPIC(社団法人日本プロジェクト産業協議会)の試算によると、日本の排他的経済水域の海底資源は、メタンハイドレートが120兆円、金属資源が180兆円規模にも上るため、現在国としても成長戦略として資源開発に取り組むことになっています。メタンハイドレートの第1回海洋産出試験は、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を中心とした産学共同研究チーム「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21)」によって渥美半島沖で2012年から2年にわたり実施され、JAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」で事前掘削作業、その後の本格的な掘削作業などを経て、メタンハイドレート分解によるガス生産実験実施の予定になっているそうです。
福島の原子力発電所事故や近年の中東の不安定な政情によって、日本のエネルギーセキュリティは差し迫った課題になっていますが、もし今後、海底資源の開発を商業ベースに乗せることができれば、平時にはエネルギー資源を輸入するとしても、非常時の自給自足の足がかりになるのではないかと、日本の海への新たな期待をもった視察でした。