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つわぶき友の会

《日 時》
2024年9月18日(水)13:30〜15:10
《会 場》
八幡浜市文化会館ゆめみかんサブホール
(愛媛県八幡浜市保内町宮内1番耕地118)
《テーマ》
電力・エネルギー問題から考えるこれからの地域創生戦略
~エネルギーの「今」を考える~

急速に人口が減少し、経済力も弱まっている日本において、地方が抱える問題をどのように解決していったら良いのか、山本隆三氏(常葉大学名誉教授・NPO法人国際環境経済研究所副理事長兼所長)にお話を伺い、その後、やのひろみ氏(有限会社タグプロダクト代表取締役社長CEO)とのトークセッションが行われました。

講演 
電力・エネルギー問題から考えるこれからの地域創生戦略~エネルギーの「今」を考える~

家計を圧迫する電気代の上昇

日本は人口減少が加速していますが、全国で将来、消滅可能性自治体に挙げられる中には、現在の人口が32,000人ほどの八幡浜市も含まれています。愛媛県全体でも現在133万人の人口が、2050年には100万人を切ると想定されています。人口が減ると、現在の人口に合わせて整備されてきた道路や鉄道などの維持が困難になるのみならず、ガス、水道、電気などあらゆるインフラ維持のために料金も値上がりします。お金に余裕があり、元気な人たちは、県庁所在地など生活に便利な場所に移住することもできます。そうすると地域の中心都市でないその他の地域に残る人たちは大変な暮らしを強いられることになるわけです。そうならないで済むためには、どうしたらいいのか、今日は皆さんに考えていただきたいと思います。

さて、今、電気料金が上昇している理由は3つあります。1つ目は日本の電気の7割以上をつくっている化石燃料の輸入価格が上がっているからです。2つ目は再生可能エネルギーの賦課金の値上がりです。固定価格買取制度により電力会社等が買取りにかかった費用を、使用量に応じて電気料金に上乗せしているもので、標準的な世帯で月に約1,000円負担しています。3つ目は、一部の新電力から電力を買っている人以外は関係ありませんが、2016年に電気の小売業への参入が全面自由化された結果発電設備が減少しているので、将来の日本全体の電力の供給力を担保する目的で設備を維持するために消費者が支払う負担金です。今年4月からこの「容量拠出金」制度がスタートし、電気料金に反映されています。

電気代の上昇によりどのような影響が出るかというと、製造でも販売でも電気は使われるので、物価の上昇につながります。物価の高騰に対処するため被服や旅行にお金をかけられなくなっています。1カ月の消費支出に占めるエネルギー(ガソリン、電気・ガス料金や燃料油)の比率は、日本の場合は平均7%くらいですが、欧州連合27カ国の平均では10%を越えています。そして欧州では収入の10%を超えるとエネルギー貧困と言われ、冬場には暖房を取るか食料を買うか、選択を迫られると言われています。ドイツでは昨年エネルギー貧困世帯が4割を超えました。一方で産業への影響は、燃料費がかかる高炉製鉄や紙製造などでは、エネルギーコスト上昇を製品価格にそのまま転嫁できない時には、人件費を下げなければなりません。また身近なスーパーやコンビニなどの小売業でも、店舗の冷凍冷蔵、照明やエアコンなどは必要ですから、電気代上昇の影響は大きくなります。電気代を下げるために最も有効な手段は、原子力発電所の再稼働の促進です。設置変更許可済みの7基を稼働すると、火力発電の燃料を約5,000億円削減可能になると見込まれています。 


再エネは“救世主”にはならない

エネルギーについては安全性を大前提に、安定供給、経済効率性、環境適合の3つのポイントで考えなければなりません。しかし戦後のエネルギーの歴史を振り返ると、時代と共に3要素への重点の置き方が変わってきました。1950年、日本のエネルギー消費の85%は国内の石炭で、水力を含めてエネルギー自給率は96%でした。しかしその後、石炭の生産量が減少する一方エネルギー消費量が大きく増えたので、中東からの石油がエネルギー消費の75%を占めるようになりました。ところが1973年のオイルショックで石油の価格が4倍に高騰したため、石油に替えて石炭をオーストラリアやアメリカから輸入し発電所で利用するようになり、天然ガス、原子力の比率も高めるようになりました。しかし2011年以降、日本では原子力発電所の再稼働が進まず、発電の約8割を輸入の化石燃料に頼り、エネルギー自給率は約13%になっています。

世界全体ではいまだに化石燃料が主流ですが、2022年2月からロシアのウクライナ侵攻が始まり、世界一の化石燃料輸出国のロシアに依存していた国々ではエネルギー価格が高騰し、特に欧州は多大な影響を受けました。またその余波で石炭が史上最高値をつけたことで、オーストラリア炭をはじめ輸入した石炭を使用している日本の電力価格も影響を受けました。またコロナ禍でエネルギー需要が減ったためにエネルギー会社が投資を減少させた結果、経済活動が戻った現在でも生産が追いつかず、価格が高止まりしたままになっています。 


■G7と世界の電源別発電量


では地球温暖化問題に対処するにはどうしたらいいのでしょうか。地球の気温はこの140年の間に1.2°C上昇しており、これは、産業革命以後、化石燃料の使用が増加してCO2排出量が増えたためと言われています。今後も世界で化石燃料の使用は増加すると予想されており、2050年の脱炭素目標達成は難しいと思われます。昨年の広島G7サミットでは、2030年までにCO2を排出しない洋上風力や太陽光の発電設備を増やすと首脳宣言したものの、実際は予想を大きく下回る増加にとどまっています。しかも再エネ設備やEV用蓄電池の重要部品の製造と供給の大半を占めているのは、中国です。また再エネの発電設備には火力や原子力発電に比べて何倍もの鉱物が必要ですが、こうした重要鉱物の生産量も中国が圧倒的に多く、安全保障上の問題が懸念されます。加えて日本の場合、太陽光発電のパネルを敷き詰めるための平地が狭く、風力発電用の風況も良くなく、環境のために再エネを使えば使うほど電気代も上昇します。また、再エネ設備は、設置のための一時的な雇用が増えるだけで、永続的な地域の雇用には結びつきません。   


少子化対策には、年収増加を優先させる

30年前日本は世界経済の18%を占め、アメリカに次いで世界2位の経済大国でした。ところが長期的な景気停滞を経て、今日本はわずか4%を占めるのみになりました。その上、平均賃金は1997年をピークに減少し、今はドル建ての賃金ではG7中で最低、韓国にも抜かれました。


■主要国平均賃金推移  

また、日本の人口はG7の中で最も減少が激しく、2070年には今の70%、2100年には半分以下になると予測されています。現在の日本で少子化が進んでいる大きな原因は、結婚しない人が増えているからです。50年前には50歳男性の未婚率は60〜70人に1人でしたが、現在は3人に1人になっています。そして年収別有配偶者率では、収入の少ない人ほど結婚していないという現実から、少子化対策はまず年収を増やすことが大事だということがわかります。そうしなければ地域の人口減は解決できませんが、長期的に収入を増やすには経済を確実に成長させるしかないので、政府は児童手当支給など安易な少子化対策を選んでいます。

収入が平均より高い産業は、金融保険、情報通信などで、こういう産業を伸ばさないと日本は豊かにはなりません。失われた30年と呼ばれる日本経済の停滞は、稼げる産業が減っているのが要因と言えます。そして生産性が相対的に低い、自動化が難しい飲食・宿泊などの観光産業では、年収増には結び付きません。例えば愛媛県がインバウンドによる収入を過大に期待していたら、それは間違いです。実際、外国人観光客が愛媛県で昨年消費した金額は、日本人観光客のわずか3%でしかありません。


地域の特性を生かした長期ビジョンの活性化対策を

では日本の経済成長、そして地域の活性化のためにどうしたらいいのか。クリーンなエネルギー中心の産業・社会構造への転換=GX(グリーントランスフォーメーション)を政府は提唱していますが、民間企業は脱炭素だけではなく既存事業への投資も必要です。大きな経済成長につながるとは思えません。一方で2030年に電力需要が減少すると予想していた政府ですが、今後はどんどん増えていくと思われます。その理由は、AIの普及によるデータセンターの需要が拡大するからです。データセンターでは半導体が大量に必要になり、周囲に半導体工場や関連した部品工場などもできます。アメリカのデータセンターは需要地の都市部に加え人口の少ない過疎の州にもありますが、それは電気代が安く、安定的に供給できるからで、土地代も安いために注目されています。八幡浜市の場合は、四国電力の伊方原子力発電所が近接しており、土地代も安価なため、誘致に適しているのではないかと思っています。

今後、CO2を出さないエネルギーとして政府は2050年に2000万トンの需要を見込む水素ですが、水の電気分解で製造するには今の倍の電力が必要になります。つまり電力需要はこれから増えます。発電が不安定な再エネに大きく頼らず、今後は、例えば、アメリカでビル・ゲイツが会長を務めるテラパワーが進める次世代型原子炉の導入も視野に入れるべきだと思います。そのためにも大事なのは、原子力発電の事故のリスクばかりを評価せず、安定供給、安価、CO2排出ゼロ、さらに雇用も創出するというメリットを考慮していくことです。すでに日本各地の原子力発電所の近くのデータセンター用の適地が買い占められているという話があり、伊方発電所が近い八幡浜市でも積極的に誘致を考えるべきではないでしょうか。  





トークセッション

やの:少子化の原因について、結婚している人は子どもを持つ割合が比較的あるそうですが、問題は結婚しない人が増え、結婚できない理由が収入の低さにあるいうお話がありました。
山本
:先進国では出生率が下がっていますが、日本の場合は収入と有婚率が比例しています。

やの:だから雇用を生み出し収入を上げるのが大事だということで、とはいえ、愛媛県の収入アップは観光業頼りでは望めないと。
山本
:昨年の4~12月の間に来日観光客は3.9兆円を使っていますが、1.6兆円を東京で、1兆円以上を京都と大阪で、残り1.3兆円の額が他の地域での合計支出額です。だから観光頼みではなく、長期で雇用を生む、地域で核になるような産業を育成し維持しないといけません。それがデータセンターです。政府は、データセンターを核に、半導体など関連企業を呼び込み、かつての工業団地を作ろうとしています。

やの:一つの産業のみならず他の産業も興り、雇用が生まれ、人口が増加するわけですね。
山本
:ただ注意しなければならないのが、物価の高騰です。今はデータセンターを作っているアメリカ・ノースダコタ州では、アメリカで唯一、人口が減少していた州だったのですが、15年くらい前のシェール革命の時、街の飲食店のアルバイト代さえも急に上がり、全米から仕事を求めて人が殺到しました。その結果、家賃が全米一にまで跳ね上がったのです。また、データセンターは国の安全保障にもかかわるので、保有者がどの国籍なのかは極めて重要です。

やの:将来的に電力需要は増えないと政府が想定していたと先生のお話にありましたが。
山本
:前回の2030年の電力需要に関するエネルギー基本計画策定時には、CO2を削減するため電力需要減少を前提にしていたのです。しかしデータセンター、電気自動車などなど今後も電力需要は増え続けることが確実ですから、次のエネルギー基本計画では訂正すると思います。

やの:たくさんの情報が入ってきて、政府でさえ本当のことを言っていないかもしれない中で、我々は何が正しいか見極めなければなりません。それに、電気代は安い方がいいし、収入は上がった方がいい、でもそんなにうまい話はないわけで、人口減少で全てのインフラの値段は上がっていくようになるなら、とにかく人口減少対策にフォーカスしなければならないですね。
山本
:人口減少をどうやって食い止めるのか、例えば、移住などで人の取り合いをしても意味はありません。地域が成長するのは、まずは電気を使う産業を誘致し雇用を増やすということです。それもインフラが適切に維持されているうちに進めないと、ますます企業誘致は難しくなりますから。何が八幡浜は得意なのかを考えると、やはり電力ですよ。伊方原子力発電所の電力を最大限活かすことが有効だと思います。
やの:みんなでどういう企業の誘致がいいか考えてみるなど、自分ごととして捉えすぐにでも動き始めないといけませんね。

会場-Q1:電力を使う産業の誘致に関して個人で何かできることはありますか?
山本
:原子力発電に対する理解を地域の人に広めるサポートも一つです。

会場-Q2:長期スパンでエネルギー問題を考えると、再エネと併用しながら、次世代炉・新型炉を使うなど原子力しかないと思いますが、政府や政治家はなぜきちんと説明しないのでしょうか。
山本
:原子力の必要性を政治家の皆さんも本当は認識しているけれど、選挙を考えて逡巡しています。原子力発電に対し20代の若者はすでに約2/3が賛成していると思いますが、彼らはあまり選挙には行きません。選挙に行く年齢層だけ見ると原子力反対がまだ多い可能性があります。また新型炉は安全性が非常に高いもので、アメリカ、中国、イギリス、フランス、ロシアで開発されていますが、この10年間研究ができなかった日本は遅れをとっています。
やの:先進的なものが世界でどんどん開発され運用されている中で、これからの日本の行く末、そして地域の将来について深く考えさせられるお話でした。


山本 隆三(やまもと りゅうぞう)氏プロフィール

常葉大学名誉教授/NPO法人国際環境経済研究所副理事長兼所長
香川県生まれ。京都大学工部卒、住友商事入社。石炭部副部長、地球環境部長などを経て、2008年、プール学院大(現桃山学院教育大学)国際文化学部教授に。10年富士常葉大学(現常葉大学)経営学部教授。21年常葉大学名誉教授。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。現在、日本商工会議所、東京商工会議所「エネルギー環境委員会」学識委員などを務める。月刊誌「エネルギーレビュー」、「Wedge On line」での連載ほか、著書に『間違いだらけのエネルギー問題』『間違いだらけの電力問題』(Wedge社)、『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)など多数。

やのひろみ氏プロフィール

有限会社タグプロダクト代表取締役社長 CEO
1975年生まれ。愛媛県出身。 有限会社タグプロダクト代表取締役社長 CEO。テレビやラジオ出演はもちろん、司会・ファシリテーター出演、CM出演や企業イメージキャラクターなども多数つとめている。 小学校PTA 会長・中学校PTA 副会長・松山市P連副会長を歴任するなど地域活動や学校活動にも積極的に参画している。NPO法人俳句甲子園実行委員会メンバー。NPO法人国際地雷処理地域復興支援の会理事。NPO法人障害者・児の性と生を考える会理事。

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