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松江エネルギー研究会

《日 時》
2024年10月6日(日)6:50〜18:15
《見学先》
中国電力株式会社三隅発電所(島根県浜田市三隅町)、さんべ縄文の森ミュージアム(島根県大田市三瓶町)、島根県立三瓶自然館サヒメル(同町)
《テーマ》
火力発電と地層処分を知るための埋没林見学

国内最大級・最新鋭石炭火力発電所の中国電力株式会社三隅(みすみ)発電所、高レベル放射性廃棄物の地層処分に通ずる三瓶小豆原埋没林(さんべあずきはらまいぼつりん)、さらに詳しく解説展示した三瓶自然館サヒメルの見学会が島根大学の学生をはじめ地域の未来を担う世代も参加して行われ、ETTも同行取材させていただきました。

見学会 中国電力三隅発電所・三瓶小豆原埋没林・三瓶自然館サヒメル バスツアー

CO2排出削減に取り組む最新鋭石炭火力発電

松江駅から貸切バスで約3時間、石原孝子代表が準備されていた放射線クイズなどで盛り上がりながら、島根県西部の浜田市に位置する、海と山に囲まれた中国電力株式会社三隅発電所に着きました。最初に広大な敷地内に建つ三隅発電所のそばにあるPR施設「三隅発電所ふれあいホール」にて、スライドを見ながら概要説明を受けました。三隅発電所には1号機(1998年運転開始)と2号機(2022年運転開始)があり、定格出力(最大出力)はそれぞれ100万kW、計200万kWと国内最大級を誇る設備です。島根県で使われる最大電力(約100万kW)を1基で賄うことができ、中国電力全体の発電量の約3割を担っています。火力発電は石炭を燃やした熱で水から蒸気をつくり、その蒸気で発電機につながれたタービン(羽根車)を回転させて発電します。使い終わった蒸気は海水で冷やして水に戻し、ボイラに送って再利用しています。三隅発電所では1,2号機ともに、水を高温・高圧にして一気に蒸気をつくる「超々臨界圧発電方式(USC*)」を採用しているため、従来より少ない石炭使用量ですみ、CO2排出量の削減につながっています。「例えば圧力鍋を使うと短時間で料理でき、ガスや電気の使用量を少なくできますよね」との説明に一同納得しました。1号機と、さらに技術が進歩した2号機の大きな違いは、1号機は高・中圧タービン60万kW+低圧タービン40万kWで100万kWをつくる構造ですが、2号機は高・中・低圧タービンの1本で100万kWつくれるのでスペースをとらず、メンテナンスもラクになったことです。また、石炭を燃やすと出る窒素酸化物や硫黄酸化物も、2号機の方が処理能力が向上しています。
*Ultra-supercritical power generation


■石炭火力発電のしくみ


2050年カーボンニュートラルに向け、三隅発電所はさまざまな最先端の技術で環境への取り組みに努めています。
木質バイオマス混燃
2013年から県内産の木くずを砕いた「木質チップ」を混焼し、さらに2号機が完成してからはさらなる混焼率アップのため海外産「木製ペレット」も導入して混焼率を拡大。木質バイオマスは、木が光合成で吸収したCO2量=木を燃やしたCO2排出量、つまり大気中のCO2増減には影響しません。
リサイクル資材
石炭を燃やした後の石炭灰の一部はリサイクル資源として活用。主に3種類あり、①粉状の「エコパウダー」:コンクリートに混ぜると強度が高くなり、高速道路の橋脚やトンネルの壁などに使用。②砂より軽い「ライトサンド」:水はけがよく、グラウンドなどに使用。③小石状の「HI(ハイ)ビーズ」:海に沈めると水をきれいにする効果があり、日本では三隅発電所でしか製造されていません。
【空気をきれいに保つ環境設備】
燃焼時の排気ガスは排気ガス中の硫黄酸化物を回収する排煙脱硫装置、窒素酸化物を無害化する排煙脱硝装置、排気ガス中の灰を回収する電気式集塵装置を通してから排出されています。
老朽化した火力発電所と置き換え
大型で最新鋭の2号機が完成したことで老朽化した山陽側の火力発電所(3カ所)を廃止し、年間約50万トンのCO2排出量削減に寄与しています。


調整役に火力発電が必要

電気の特徴として、蓄・乾電池で多くの電気は貯められないため、電力の需給バランスを保つことが大切です。需要と供給が同量でないと停電につながるからです。太陽光や風力の発電量が天候によって多くなると、石炭火力の発電量を落として供給量を調整し、需給バランスを保っています。中国電力管内で太陽光発電は730万kW接続され(2024年3月末現在)、三隅発電所(200万kW)の発電量の約3.5倍になります。「接続申込している分も合わせると約3,000万kWになり、需給バランスを保つことが難しくなってきています。石炭火力がダメとなるとバランスをとるのが大変だとご理解いただければ…」というお話でした。日本はエネルギー自給率がOECD国で下から2番目の低さ(13%:2022年度)で、資源がないので海外から買わなければなりません。石油や天然ガスは価格が乱高下した時期がありますが、石炭は政情が安定しているオーストラリアやインドネシアから比較的安く買うことができ、埋蔵量も多くあります。しかしCO2排出量が多い点が問題です。再エネ、原子力も一長一短あるので、さまざまな発電方法を組み合わせる「エネルギーミックス」が大事です。

バーチャルツアー(映像)を見た後、構内バスに乗り、高さ80mの大きな発電所本館に着きました。1階入口に石炭専用船「新石洋」の模型が置かれています。日本海は冬荒れることがあり、船が港に入れなくても発電できるようにするため、日本で一番多く貯蔵できるサイロ方式石炭貯蔵設備(石炭貯蔵67万トン:マツダスタジアム山盛り1杯分)をつくったとのことです。

中央制御室が燃料管理の部屋と発電管理の部屋に分かれているのを見た後、3階のボイラ建屋に入ると600℃の高温の蒸気を大量につくり出せるボイラの運転音が鳴り響いていました。タービン建屋へ歩いて移動すると、今度は1分間に3,600回転するタービン発電機の運転音が鳴り響いていました。エレベーターで屋上に上がり、所々で下からの熱風を感じながら、構内を一望しました。船が運んできた燃料は日本一の能力を誇る揚炭機で荷揚げされ、風で飛ばないよう密閉された長いベルトコンベアで石炭と木質ペレットに分けて燃料貯蔵設備でそれぞれ貯蔵された後、ベルトコンベアで発電所本館へ送られます。燃焼時の排気ガスは3つの装置(排煙脱硫装置、排煙脱硝装置、電気式集塵装置)できれいにした後、高さ200mの煙突から放出されます。敷地内には工業用水などのタンク群、HIビーズ製造設備、海側には広大な灰処分場(マツダスタジアム6個分)も見えます。焼却灰のほとんどは有効利用されますが、残った分は埋め立てているとのことでした。再び構内バスに乗りながら各建物の説明を伺い、ふれあいホールに戻って質疑応答が行われました。

参加者からの質疑応答
Q. 津波対策は?
A. 明治5年の浜田地震(震度7)の時、津波の高さは3mだったが、発電所は海抜5mの所にある。仮に津波が来ても発電所は安全に停止する。
Q.
石炭灰はどのくらい再利用されているのか?
A. 石炭を燃やすと約10%が灰になり、そのうちほとんどは再利用している。


4千年前の縄文の森をそのまま地層の中に密閉

バスで島根県中央部へ向かい、三瓶山(標高1,126m)のふもとにある「さんべ縄文の森ミュージアム」を見学しました。「地下展示室入口」と書かれたドアから案内ガイドの方と一緒に階段を降りて行くと、壁に地層の大きな標本が展示されています。地層は上下で模様が違っていることが一目でわかり、上は江戸時代〜今、下は4千年前の縄文時代に三瓶山が噴火して土石流・火砕流・火山灰が降り積もったものだそうです。さらに通路を進むと吹き抜けになっていて、約4千年前の縄文時代に三瓶山の火山噴火で埋没した複数の巨木が当時のまま根を張り、幹を残して自立したり横たわったりした状態で保存展示されていました。根回り約10m、幹回り約7mに達するものもある縄文杉の大きさは圧巻で、驚きの声が上がりました。ここ小豆原地区は元々田んぼで、約40年前に水田整備工事で掘っていた際、地中に直立する巨木が発見され、これらの木は「埋没林」と呼ばれています。発見された場所や配置も変えていないので、目の前に広がっているのは太古の森の姿そのものということになります。

中央に立つ杉の木は636歳で高さ約10m、奥に立つ杉の木は450歳で高さ約12mですが、当時はこの4〜5倍の高さがあり、鬱蒼とした森だったと推定されています。右にはケヤキの木、左にはトチの木なども立っていますが、杉がほとんどを占めていた森で広葉樹は生えにくかったのではないかと言われています。回り階段を途中まで降りたスペースに4千年前の地層の一部が展示され、触ることができました。土は土石流と火山灰が混ざったものでサラサラした感触で、あちこちに埋まっている木は新鮮さを感じます。4千年前の木なのに腐っていない状態で発見された理由は、地層の地下水の中にはほとんど酸素がなく真空状態を維持できたからです。木を食べる微生物や虫は酸素がないので生きられず、缶詰めやレトルトパックのように4千年間そのままの状態で閉じ込められたのです。高レベル放射性廃棄物の「地層処分」が、物質を閉じ込めるという地下の環境が持つ性質を利用して考えられたことがよくわかりました。

さらに回り階段を一番下まで降りると、埋没林をぐるっと囲む形で間近で見学できるようになっていました。立っている木は表面に皮が付いていますが、横たわっている木は土石流で流されてきた流木なので皮がなくヒビが入っていて、2本の木がくっついた合体木もありました。これらの木は1本1億円と評価され、ここには30本展示、公園内だけでも250本発掘されています。約40年前に工事で発見された際はその価値がわからず、切られて埋め戻されましたが、20年後、その時の写真を見た火山研究者が埋没林ではないかと気づき、調査・発掘が行われました。その結果、地下に森が存在することが判明し、「三瓶小豆原埋没林」と命名され、この博物館が建設されました。埋没林は全国で30カ所発掘されていますが、博物館は3カ所(仙台・富山・島根)しかなく、ここの埋没林は根元だけでなく幹がちゃんと残っているので世界でも珍しいと評価されています。その理由は元々谷だったので土石流の土砂がたくさん流れ込み、「森の化石」として保管できたからです。ちなみに、地層から掘り出して展示している木はどんどん腐ってくるので、現在はトレハロースの溶液を散布して保存処理が進められています。

最後に、近くにある「島根県立三瓶自然館サヒメル」を見学しました。島根の自然を中心に、生物・地形・地質・天文まで幅広く展示されています。直径20mのドームスクリーンでは、三瓶山が噴火して三瓶小豆原埋没林ができるまでの迫力のある映像が上映されていました。また、ここにも埋没林が展示されているほか、埋没林が調査発掘された経緯などもわかりやすく紹介されていました。最上階の5階には大きな天体望遠鏡が設置された天文台があり、定期的に天体観察会が開催されているそうです。本日は2050年カーボンニュートラルを見据えた最新鋭の石炭発電所から4千年前の太古の森まで、さまざまな観点からエネルギー問題について興味深く学べた一日となりました。また、若い世代の参加者が活発に質問されるなど、積極的に学ぼうとされていた姿勢が頼もしく、印象に残りました。  


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