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にいはまエネルギー・環境クラブ

《日 時》
2024年11月14日(火)13:30〜15:10
《会 場》
西条市地域創生センター(愛媛県西条市ひうち1-16)
《テーマ》
「エネルギーの「今」と「近未来」を考える」

世界情勢の変化によって影響を受けやすい問題の中でも、自給率が低い日本のエネルギーについては国が最優先で考えなければなりません。どのようなエネルギー政策を選択すれば、これからの暮らしが少しでも良くなっていくのか、石川 和男氏(政策アナリスト/社会保障経済研究所代表)に詳しくお話を伺いました。


講演
エネルギーの「今」と「近未来」を考える

高止まりしているエネルギーコスト

エネルギーは日本も世界でもこれからまだ消費が増加し続けます。そして私たちにとって身近な問題といえばエネルギーコストです。水道、電気、ガスといった公共料金は毎月必ず徴収されますから、なるべく安い方が生活が楽ですよね。10月までは電気、都市ガス代は補助金が出ていましたが、これから再開するかどうか政府が調整に入っており、臨時国会で経済対策の一つとして論戦が行われます。補助金の原資は皆さんが払った税金です。消費税が充てられるわけではありません。ちなみに、消費税のうち8%は年金、医療、介護などの社会保障、2%は幼児教育無償化など少子化対策に充てられています。エネルギーの補助金は法人税、所得税と国債が財源です。自分の払った税金を補助金で取り戻すと思えば少しはいいかなと思いますが、でも補助金を出さなければならないほど高い金額になっているわけです。

エネルギー料金が高い理由は、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻による化石燃料価格上昇と思われていますが、実はそれ以前からガソリンについては補助金が出ていました。世界で原油価格が上昇傾向になり、運輸燃料として必須のガソリンに対して補助金は欠かせませんでした。そしてウクライナ侵攻で上昇した原油価格に連動して天然ガスの価格が上昇し、通常ならあまり影響を受けない石炭も天然ガスの需要集中により価格が暴騰したため、需要が増加し、22年には一瞬、天然ガスより価格が高くなるほどでした。今は価格が落ち着いていますが、天然ガスと石油は上昇したままです。また天然ガスと石炭の需要は主に発電用です。日本が調達する天然ガスのうち60〜70%は電力のためで、ガスコンロで使うような都市ガスの比率は30〜40%です。

日本は資源が乏しいため化石燃料輸入に依存し、東日本大震災前の2010年度でもエネルギー自給率は20.2%と低かったのが、原子力利用が停止してからさらに低下し21年度には13.3%になっています。主要国の一次エネルギー自給率を比較すると世界で37位で、日本と同じく資源が少ない韓国は36位になっています。一方、自給率トップのノルウェーは745%、続くオーストラリアが327%、そしてアメリカも100%を超えています。アメリカは、天然ガスはロシアを抜いて、石油はサウジアラビアを抜いて世界で1位の生産国です。かつて日本でも九州や北海道で石炭採掘が盛んに行われ経済発展を支えてきましたが、日本の炭鉱は深掘りで危険な上に採掘コストがかかるため、露天掘りで安価な上に高品質の石炭をオーストラリアから輸入するようになりました。私が通産省に入省した最初の仕事が、石炭鉱の閉山作業で、上司が閉山を進める決断をした際に「誰一人として生活に困らないようにしよう」という言葉が印象に残っています。エネルギー変換のように大きな改革をする時には、かかわった人たちへの補償や就職先の斡旋など時間やお金をかけて進めなくてはいけないと感じた記憶があります。


■我が国のエネルギー自給率



■主要国の一次エネルギー自給率比較(2021年)


日本の雇用を生むきっかけは原子力の再稼働

エネルギー自給率になぜ原子力がカウントされるかといえば、化石燃料は発電の際に燃やしたら終わりですが、極めて小さな体積のウラン燃料を一度輸入すれば、長い年月エネルギーを出してくれて、さらに核燃料サイクルできるからです。これは原子力発電所から発生する使用済み燃料を再処理工場で処理し、もう一度MOX燃料として利用する仕組みで、現在は委託先の英仏で再処理してもらい日本に戻していますが、六ヶ所再処理工場・MOX燃料加工工場が竣工されれば国内で核燃料サイクルできるようになります。

震災事故後、「国民生活を守るため」再稼働を判断したのは当時の野田首相で、2012年の関西電力の大飯発電所でした。そして2013年の新規制基準施行後に再稼働した原子炉は、九州電力の川内、同・玄海、新規制基準施行後で再び大飯、関西電力の美浜、同・高浜、四国電力の伊方です。今年12月には中国電力の島根が開始予定です。また東日本では唯一、東北電力の女川も11月中旬に再稼働しました。しかし東日本の多くの原子力発電所は再稼働時期が未定です。また北陸の日本原子力発電(株)の敦賀は原子力規制委員会が再稼働の前提となる審査で不合格とすることを正式に決定しました。事故から13年経っても日本ではまだ原子力に対して過敏な反応が続いていて再稼働が進みません。原子力を止めたことで電気代が上がり、それに対して補助金を出すというのは、ある意味、無駄なことだと思いませんか。

原子力発電の再稼働が進んでいるかどうかで、電気代に地域格差が出ています。今年11月に使った電気代の請求額がどうなるか予想比較したのが以下の表です。補助金措置がいったん終了するため全10社で値上がりしますが、九州や関西では他に比べて電気代が安くなっています。九州の熊本県でTSMCという台湾の半導体工場を誘致しましたが、半導体工場は安定して品質の良い電気を大量に使うため、九州電力が電力を供給するからうまくいくと思います。しかし、北海道の千歳に2027年に竣工しようとしている、日本の8企業が出資して設立したラピダスの最先端半導体工場は、北海道電力の泊発電所の再稼働が不透明なままだと、九州と比較して電気代が2,000円くらい高くなり、採算が取れないのではないかと危惧されています。コストが安価な中国、インド、東南アジアなどに出て行った工場を日本国内に呼び戻し雇用を増やそうとするのであれば、電気代を安くしなければ経営が成り立ちません。私は電力の中で原子力が一番優れていると言っているのではなく、エネルギーの選択肢を相対比較すると、日本という国にとってどれが一番安くていいのかといえば原子力だと言っているのです。 


■電気代の地域格差と高止まり



エネルギー需要の増大とカーボンニュートラルの両立を目指すために

日本の2022年度の一次エネルギー供給の構成は、石油36.1%、石炭25.7%、天然ガス21.5%となっており、83.4%を化石燃料が占め、原子力は2.6%、そして水力が3.6%、太陽光、風力、バイオマスなどの再生エネルギーは10.4%になっています。世界のエネルギー消費においても、日本と同様に81%以上を化石燃料が占めています。1965年からこれまで世界は、第一次オイルショック、第二次オイルショック、リーマンショック、そして2020年の新型コロナウイルス感染症の影響でエネルギー消費は一時減少しましたが、人口が増え続ける世界で今後は確実に増加します。日本も21年に閣議決定した第6次エネルギー基本計画ではエネルギー消費が減少する見込みでしたが、デジタル化の進展による半導体工場やデータセンターにかかわる電力需要増加を考慮して、来年春の第7次基本計画が策定されるはずです。

政府がこれまでスローガンにしてきたカーボンニュートラルのための再エネ主力化の実行は、私は不可能だと思います。日本が太陽光発電を導入し始めた当初は世界のベスト20にも入っていませんでしたが、今や世界第3位の導入量です。それにもかかわらずエネルギー自給率が増えない理由は、再エネの発電効率性が低いことと、太陽光パネルの設置に適した平地や洋上風力に適した海域も少ないといった地勢的な要因があります。しかも太陽光パネル、風力発電の風車製造に占める割合で中国は世界で1位を独占しており、国家戦略として進めている中国からの輸入依存に安全保障上のリスクがあるからです。

2025年1月にアメリカの大統領にトランプが返り咲くと、地球温暖化問題が後退する可能性があります。まずCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)からの再離脱をもくろみ、また環境対策に熱心だった民主党政権と真逆に、国内の石油、天然ガスの採掘を率先して始めようとしているからです。日本はアメリカの方針に左右されるとしたら、それでも構わないと私は思います。というのは世界でCO2排出量が多いのは中国、アメリカ、EUであって、日本はわずか3.3%しか占めていません。日本は省エネ技術で世界最高水準なのに、これ以上のCO2削減まで努めるような国になったら、国民にとって多大なコスト負担になります。

2050年のカーボンニュートラル目標に向けた主な先進国の進捗状況を見ると、2021年現在で日本は目標数値を達成しています。ところが再エネが最も進んでいたはずのドイツでさえ達成していませんし、G7の各国は全く達成していないにもかかわらず、首脳会議においてCO2排出量が多いからと日本の石炭火力停止を求めてくるのは矛盾していると思います。CO2削減は確かに必要ですが、私は日本がこれ以上カーボンニュートラル目標に向けた努力を続けていったら、今後、電力の需要増加が予想されるために多大な犠牲を払うことになると思います。

 


■2050年ネット・ゼロに向けた進捗状況


もしカーボンニュートラルを進めるのであれば、日本の企業または国が儲かることをやるべきだと思います。例えばすでに日本の火力発電所の効率性、公害防止技術は世界でトップレベルに達していますから、今後は、火力発電所の煙突にフィルターをつけて外に排出されるCO2を抑える技術などの開発を進め、その技術を世界に売り込むのが日本の将来のためだと思います。国がどうやって儲かるかを常に考えることは他国との交渉に必要であり、政治家や官僚は、国民が潤うことで税収が増え社会保障や公共事業に還元できる公的な環流システムを考えるべきですね。 


石川 和男 (いしかわ かずお)氏プロフィール

政策アナリスト/社会保障経済研究所代表
1965年福岡生まれ。84~89年東京大学工学部資源開発工学科。89~2008年通商産業省・経済産業省・内閣官房(電力・ガス自由化、再生可能エネルギー、環境アセスメント、国内石炭鉱業合理化、産業保安、産業金融・中小企業金融、割賦販売・クレジット、国家公務員制度改革などを担当)(退官前後より、内閣府規制改革委員会WG委員、同行政刷新会議WG委員、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、東京女子医科大学特任教授、専修大学客員教授などを歴任)。11年~社会保障経済研究所代表(これ以降、多くの企業・団体の役員、顧問などに就き、現在に至る)。20年~22年経済産業省大臣官房アドバイザー。21年~北海道寿都町・神恵内村地域振興アドバイザー。22~24年BSテレ東「石川和男の危機のカナリア」アンカー。23年〜ニッポン放送「石川和男のポリシーリテラシー」アンカー。24年10月〜BS日テレ「数字で知る日本の今」アンカー。その他、テレビ・ラジオ・ネット番組などでコメンテーター、クイズ番組回答者として出演多数。

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