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食のコミュニケーション円卓会議

《日 時》
2025年1月21日(火)19:00〜20:30

最近の世界情勢の急変や直近のアメリカ・トランプ大統領再任により、今後日本はますます対応に追われるようになります。中でも国民生活を支えるエネルギーについては、これまでの方針のまま進んでいいのか、杉山大志氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)に客観的な事実に基づいたお話をオンラインで伺い、その後、質疑応答が行われました。


講演   
地球温暖化問題の終わりと戦争を防ぐエネルギー政策  

日本と世界のエネルギー、CO2排出量の実情

本日は皆さんと実際のデータを共有しながら話を進め、私の見解を述べたいと思います。まず増加し続けている世界のエネルギー消費量について、2021年には石炭、石油、ガスの化石燃料が82%を占めているのが現状です。1997年のCOP3で化石燃料消費増加によりCO2排出量が増加するので削減すべきだと京都議定書が採択された後も増え続けています。その理由は、化石燃料は使い勝手が良く安価だからです。世界は脱炭素に向かっているとはとても言えない状況です。そのためCO2排出量は世界で増加していますが、アメリカやEUは緩やかな減少傾向にあり、一方、中国、インド、その他の開発途上国では右肩上がりで増加しています。

石炭火力発電の設備容量で中国と日本を比較すると、中国は日本の20倍もあり、その上、今後数年も建設ラッシュになっています。日本では石炭火力発電設備を減らそうとしていますが、中国で大量のCO2が排出されている中では、日本が石炭火力を制限してもすずめの涙で、意味があるとは思えません。2050年にCO2排出・吸収量ゼロを目標に掲げた日本のCO2排出量は順調に減ってきました。しかしその理由を経済学的に見ると、産業の空洞化であることは明らかです。国内産業での経済活動量の低下、つまり国内の工場が稼働しない、工場が海外移転したことが原因だと経団連のレポートにも記載されています。それに比べて原子力発電の再稼働や再エネによるエネルギーの低炭素化、省エネの効果は少ない割合でしかありません。個別企業を見ても日本では鉄鋼会社が国内工場を閉鎖し、同じく脱炭素を一生懸命やってきたドイツやイギリスでも工場を海外に移転することで国内における人員解雇などが社会問題になっています。

日本政府内では昨年10月末から12月末にかけて第7次エネルギー基本計画の案がまとめられ現在はパブリックコメントの募集を開始しており、おそらくこのまま閣議で承認されることになると思います。第6次エネルギー基本計画における50年度CO2排出ゼロに向かって直線を結び目標値を決定するという方針を踏襲し、2030年度にCO2排出量46%、35年度に60%、40年度に73%削減としています。CO2排出量を決めるというのはエネルギーの量を決めるに等しく、エネルギーは経済活動や生活面でも必ず必要なものですから、直線を引いて決めるという杜撰な判断は論外だと思います。


■ 第7次エネルギー基本計画


冒頭、世界のエネルギー消費の状況を話しましたが、日本でもエネルギーの8割以上は化石燃料が占めており、石炭が25.8%、石油が36.2%、LNGが21.5%と合計で83.5%、世界とほぼ同じです。そして日本はCO2削減目標を技術的に実現できるのかどうかがまず疑問です。というのはコストが莫大にかかるからです。政府は7つのシンクタンクに試算を依頼したところ、その全てが「経済成長しながらCO2をゼロにできる」と回答しました。しかし、脱炭素政策によって経済活動が損なわれないかを確認するための試算であるはずなのに、シンクタンクへの依頼の前提条件として「安定供給、経済成長、脱炭素を同時に実現するという我が国のGXの基本的理念に基づき、経済活動量を過度に損なわないこと」と定められており、本末転倒な試算となっているのが実態で結果は正しいとは言えません。  


地球温暖化対策の費用対効果

もとより、なぜCO2をゼロにしなければいけないか疑う必要があると思います。気象庁のデータを見ればわかるように、日本の台風は過去40年にわたり増加もせず強くもなっていません。一部のデータだけ切り取って激甚化と言っている人がいるだけです。また世界の気象データでは気象災害による死亡者、死亡率は100年単位で見ると技術の進歩により激減しています。そして過去50年の食料生産でとうもろこし、米、小麦、大豆とも、品種改良や肥料などの影響で右肩上がりで収穫量は増えていて、気候危機の影響で生産が減少している兆候は全くありません。収穫が悪くなったりするのは、自然変動による急激な気温の変化のせいです。長期にわたってゆっくりと暖かくなるのであれば、食料がよく育つようになります。

地球温暖化はゆっくりした変化で起こり、昨年や今年が暑かったのは自然変動もしくは都市熱の影響が大きいです。そしてCO21兆トン排出で気温が0.5°C上昇するというIPCCの見解に基づくと、日本の年間CO2排出量10億トン(0.001兆トン)で0.5°Cの1/1000、つまり 0.0005℃だけ気温上昇するわけで、2050年に日本のCO2をゼロにしたらどれだけ気温が下がるか計算すると、0.006℃の気温低下です。このわずかな気温低下のために莫大な経費をかけることは費用対効果を考えると疑問が出てきます。

日本の電気代は現在高騰しています。理由は3つあり、再エネの大量導入、原子力発電所の再稼働停滞、化石燃料の価格上昇です。ところが第7次エネルギー基本計画では、2040年に今は21.8%を占める再エネによる電力を4〜5割にすると言っています。再エネのうち1割は水力なので太陽光と風力を現状の3〜4倍にするわけです。しかし太陽光発電は導入するだけ電気代が高くなります。というのは二重投資だからです。家に太陽光パネルをつけていても、夜や天候の悪い日にも電気は必要ですから、太陽光だけで電気は賄えず火力や原子力発電所が必要なためです。実際に太陽光や風力の普及率が高い欧州の国々では電気代が極めて高くなっています。またCO2削減のための再エネのはずなのに、太陽光パネル生産が世界一の中国・新疆ウイグルでは、石炭火力発電所の電気でパネルを作っているのですから、矛盾しています。


■エネルギー基本計画 


発電コストで最も安いのは既存の原子力・火力発電所の利用です。原子力発電は1kWhで1.9円、石炭火力も4.2円と安価です。また今後は半導体工場やデータセンター増加により電力需要がますます伸びると言われているので、次に発電コストが安い原子力・火力発電所の新設もすべきです。ところが政府はCO2をゼロにするグリーントランスフォーメーションに執着しており、アンモニア発電や、石炭火力発電所から排出されるCO2を回収・貯留する技術(CCS)を適用した発電など高コストなものを推進しようとし、また太陽光や風力発電もさらに導入すると言っていますが、電気をためておくバッテリーも価格が高いです。これでは電気代はどんどん高くなる一方です。電気のみならず、日本政府が投資を促進しようとしているのが、23年に成立したGX法案で、10年間で150兆円、つまりGDPの3%、国民一人あたり120万円の費用をかけると言っています。政府はこれだけの投資でグリーン成長すると言ってはいますが、高コストのものにばかり投資をして経済成長するわけがないと私は思っています。  


■本当の発電コスト   


地政学リスクに大きな影響を受けるエネルギー

ロシアとウクライナの戦争においてはお互いのエネルギー施設を攻撃しています。また中東イエメンのフーシ派の紅海封鎖により、欧州の船はアフリカの南端を迂回する動きが拡大しています。日本の近海では、中国が台湾周辺で軍事演習を行い、ガス供給を断つための海上封鎖演習だと言っています。もし中国による戦争が起こったら、東京から2,000km半円内の中国本土からミサイルやドローンで日本のエネルギーインフラは攻撃され、日本に近づく船も攻撃されます。国内に石油は200日分の備蓄がありますが、石炭、ガスは在庫を減らしてきたので両方とも1カ月分もありません。原子力は再稼働して通常のオペレーションになっていれば、ウラン燃料は3年間分の在庫があるため、いざという時に電気供給を続けることができます。従って、日本は防衛強化とともにエネルギー備蓄の積み増しと原子力の再稼働が急務だと思います。

エネルギーが止まるとあらゆる経済活動が止まるのみならず、食糧危機にもなります。というのは今食べている食料は1カロリーの食事のために10カロリーもの化石燃料を消費している計算だからです。家庭での保存・調理やトラックなどの輸送、販売時の包装や店内の照明のみならず、生産時にも燃料は使われており、エネルギーがなくなると大都市に食料が運び込めなくなり飢餓状態になるかもしれません。そのためにも食料備蓄をすべきですが、現在の日本政府の食糧備蓄は1人あたり7kgしかありません。

海上封鎖のリスク防衛策で参考になるのは1980年代のイラン・イラク戦争です。別名タンカー戦争と言われたくらいお互いの国のタンカーを攻撃したのですが、隣国のクウェートはタンカーを無事ペルシャ湾に通すために、船籍をアメリカに変えて(リフラッグ)、米軍が自国船扱いで護衛しました。  


トランプ大統領のエネルギー政策と日本の対応

アメリカのトランプ大統領は就任直後から多くの大統領令に署名しており、移民問題と同じくらいエネルギー問題を重視しています。気候変動対策を重視してきたバイデン政権を完全に否定し、選挙公約で言っていた通り、エネルギーを国内で生産して経済を支える方針転換を図っています。キーワードはエネルギー・ドミナンス(支配)です。国内の石油、天然ガスなどを掘りまくり、豊富で安価で安定したエネルギーによる光熱費削減で経済を支え、中国、ロシア、北朝鮮、イランといった敵対国を圧倒し安全保障を確保しようとしています。

こうした考えは、トランプ大統領のみならずアメリカ共和党の総意であることが日本にはあまり伝わっていません。共和党の人たちは、アメリカが石油やガスの生産を続け世界に供給していれば、欧州によるロシアのガス依存からウクライナ戦争にまで突き進まなかったと考えています。アメリカの報道はCNNに代表される民主党支持層向け、Fox Newsに代表される共和党支持層向けに二分され真逆の報道をしているのに、日本に入ってくるのは前者の報道がほとんどだから理解できないのです。

バイデン政権が進めてきたグリーンディールの撤廃、ESG投資の排除、そしてパリ協定も再度脱退しました。パリ協定は実は、アメリカの離脱以前からほぼ破綻していたと言えます。CO2排出増加で自然災害が激甚化し気候危機になったとする先進国側に対し、途上国側は過去に先進国から排出されたCO2排出が原因なのだから賠償とともに今後自分たちが削減するための費用負担を請求しました。しかし巨額の金額を巡って先進国側と途上国側の条件交渉は行き詰まっていました。

私から見ると脱炭素はすでに「オワコン」と言えます。コストが高いCO2削減は元々あり得ない話だったのに、最近の世界情勢の急変からますます不可能に思えます。ロシアは石油・天然ガスの輸出が唯一の財源だから誰も止められないですし、中国・インドはロシアから石油を輸入し、石炭火力発電所をどんどん建設しています。そしてアメリカは今後国内の化石燃料採掘を進め、ドイツ、イギリス、日本だけがCO2削減努力を続けるとしたら国の産業は崩壊してしまいます。だからパリ協定について、日本はアメリカに次いで離脱すればいいと思うのですが、日本政府はそうしない予定です。しかし京都議定書の時にアメリカは批准せず、日本は2010年の第二約束期間の数値目標を提出しなかった結果、空文化したのですから、今回も数値目標を提出しなければいいだけです。

そして日本はトランプ政権のエネルギー・ドミナンスを一緒にやればいいと思います。現状を考えると、気候変動よりエネルギー安全保障の方が大事なので、化石燃料を豊富に持っているアメリカから買えば、先ほどのイラン・イラク戦争時のクウェートのように、アメリカにとっての国益になり軍隊も動かしやすいため、中国は手出しができません。こうしておかないと、今日本が石油を買っている船は9割が中東からで、船長はインド人、乗組員はフィリピン人で船籍はパナマというように、平時なら安いコストでいいものの、ミサイルやドローンで攻撃されたら日本に船が来なくなるだろうと思っています。そうならないためにもアメリカからのエネルギー輸入増加は必須になると考えています。    




質疑応答

Q:再エネのコストは現状で高いのはわかるが、普及が進めば安くなるのではないか。
A
:導入した人は儲かる仕組みになっているかもしれないが、社会全体として見ると補助金の原資を賄っている人にとっては電気代が上がっている。再エネだけで電力が自立するようになるというならば、送電線も発電所も不要になり、それこそ電気のシステム全体を変えなくてはならなくなる。

Q:気温は本当に高くなっていないのか、夏には暑い日が続き、肌感覚とのギャップがあるように思える。
A
:感覚をあてにしないほうがいい。確かに東京のような都市の気温はヒートアイランド現象で100年で3°Cは上がっている。気温上昇は地球温暖化というより、自然変動と都市熱による。温暖化リスク問題については、近年メディアの情報量が膨大になり、私たちはそれを目にすることで「情報の利用可能性バイアス」がかかり、温暖化をなんとかしなければいけないと判断してしまうのだろう。

Q:150兆円規模の国のグリーン政策は全部無駄金になるとは思わないが、実際どうなのか。
A
:150兆円のうち30兆円は再エネにすると言っている。国内産業は潤うだろうが、増加させる分だけバッテリーや送電線を作ったり、別に新しい発電所を建てる必要性は全くない。国全体で、この筋の悪い投資をする方向はものすごく間違っていると思う。

Q:10万年単位で気候は変化していると言われている中で、CO2問題はせいぜい10、20年単位の議論をしているが、開発途上国にとってこの議論はどう影響するのか。
A
:開発途上国は気候変動で困っているわけではなく、化石燃料を使って経済発展しようとしている時に、先進国側がこれを阻止しようとするのは犯罪行為に等しい。日本はアジア会議や世界銀行にお金を出しているが、両者とも化石燃料を使う事業には融資も投資もしなくなり、一例としてバングラデッシュの火力発電所プロジェクトからJICAさえ撤退せざるを得なくなったのは残念だ。

杉山 大志(すぎやま たいし)氏プロフィール

一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
1969年北海道生まれ。91年東京大学理学部物理学科卒業、93年東京大学大学院工学研究科物理工学専攻修了後、一般財団法人電力中央研究所入所。95年から97年までオーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA)研究員。2017年よりキヤノングローバル戦略研究所上席研究員、19年より現職。温暖化問題およびエネルギー政策を専門とする。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、経産省産業構造審議会等の政府委員、米国ブレークスルー研究所フェロー、慶應義塾大学特任教授、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術委員、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)専門委員を歴任。産経新聞「正論」レギュラー執筆者。著書に「亡国のエコ」(ワニブックス)「15歳からの地球温暖化」(扶桑社)「SDGsエコバブルの終焉」(杉山大志(編著)、川口マーン惠美(著)、掛谷英紀(著)、有馬純(著)/宝島社)など。

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