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石川エネの会 のと

《日 時》
2025年3月1日(土)10:20〜12:10
《会 場》
矢田郷コミュニティセンター(石川県七尾市本府中町ヲ部38番地)
《テーマ》
エネルギーのこれまでとこれから

日常生活で気づくことが少ないエネルギーの大切さを、自然災害に遭った時などに強く感じることがあります。日本のエネルギーの歴史を振り返りながら、国のエネルギー基本政策の方向性を学び、これから私たちはエネルギーにどのように向き合っていけば良いのか、村上朋子氏(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 電力ユニット 上級スペシャリスト)にお話を伺い、その後グループで討議し質疑応答が行われました。


講演          
エネルギーのこれまでとこれから

140年前まで電力はなかった

エネルギーの「これから」を考えるにあたり、「これまで」を振り返ることは大切だと思います。なぜなら歴史を学ぶことで過去から現在に至るプロセスを知り、現在の立ち位置を客観的に理解できるからです。カーボンニュートラルを目指す2050年を展望するために、日本ではエネルギーをどのように使ってきたかをまず振り返りたいと思います。

日本列島に人が住み着いた約3万8000年前の遺跡からは、木屑を燃料とした薪が発見されており、薪はどこでも誰でも使えるエネルギー源として現在も使われています。次に使われたのが石油で、奈良時代より古い時代に、土の中に燃える成分があったことが記されており、現代では燃料としてのみならずプラスチック製品や衣服などの素材として身近に使われています。石炭は、薪を集めて燃やしたら地上に露出していた黒い岩が燃えたという記述が15世紀にあり、薪の代替燃料として使われてきました。そして、現在では発電燃料として多く使われているガスは、明治時代に照明のガス灯として使われたのが始まりです。また動力エネルギーとしては、7世紀に水力(水車)が使われ始めています。山地が多く雨も多かったため水利に恵まれ水車が発達したのに対し、風力(風車)については中国から伝わったとされていますが、風は全く吹かなかったり強風で災害をもたらすものとして嫌われたのか日本では実用的に使われることがほとんどありませんでした。

電力がいつから使われたかというと、はじまりは約140年前の銀座の電灯でした。1887年には日本初の火力発電所が東京の日本橋茅場町に誕生し、国産の石炭を燃料にしています。2年後には大阪でも火力発電所が誕生し、また1891年には日本初の事業用水力発電所・蹴上発電所が琵琶湖疏水を利用し営業運転を開始し、今も現役で運転しています。その後日本全国に水力発電所ができ、明治時代には石炭火力発電所もできて電力使用が増加していきます。


世界情勢や社会情勢の影響で変化してきた日本のエネルギー政策

燃料、照明、動力の主流は徐々に電力になり、第二次世界大戦後に日本が高度経済成長できたのは国内産の石炭火力と水力によるともいえます。さらに国は安価な海外産の石油を輸入し、石油火力発電所を作っていきました。ところが1970年代のオイルショックを契機にエネルギー源の多様化を図らざるを得なくなります。石油という一つのエネルギー源に依存したことで、原油価格高騰により電気料金の高騰が起きたからです。そして天然ガス火力や原子力などの推進とともに、省エネも進めるようになりました。1990年代以降には、地球温暖化問題により、それまで補助的なエネルギー源だった太陽光や風力の開発、また水素やアンモニアの開発も手がけるようになりました。オイルショック以降、電源の多様化を推進してきた日本は、2010年には世界で有数のバランスの取れた電源構成=ベストミックスを達成しました。ところが2011年の福島第一原子力発電所の事故発生以降、そのバランスが崩れエネルギー政策の抜本的な見直しがされています。


■日本の電源構成推移


日本のエネルギー政策は、エネルギー基本計画を見るとわかります。2002年に制定されたエネルギー政策基本法に基づき翌年発表された第1次エネルギー基本計画は、その後およそ3年ごとに検討され、必要に応じて変更された結果、閣議で決定されています。これまでに7回のエネルギー基本計画が発表されました。14年の第4次エネルギー基本計画では原子力を可能な限り低減、再エネは拡大し2割を上回ると書かれており、18年の第5次エネルギー基本計画では2030年のエネルギーミックスの実現、2050年の脱炭素への挑戦が明記されていました。2022年、ロシアによるウクライナ侵攻で世界のエネルギー情勢に激震が走り、今年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、新しい目標が定められました。

資源エネルギー庁のHPに掲載されているエネルギー基本計画は誰でも見ることができますが、83ページにも及び、概要のページでさえ読んできちんと理解することは難しいと思います。内容を簡単にまとめると、2011年の福島第一原子力発電所の事故以降、そして前回の第6次基本計画以降の状況の変化から、2040年に向けた方向性が書かれています。またエネルギー政策の基本的視点S+3E、つまり安全性Sの確保を大前提とし3つのE=安定供給、経済効率性、環境適合性の同時実現を達成するための具体的な取り組みには、省エネ、脱炭素電源の拡大、次世代エネルギーの確保などが挙げられています。一方で化石燃料もまだ必要なため、CO2回収を考慮しながら使用するなどの説明もあります。そして2050年にカーボンニュートラル実現を目標として掲げているので、より長期の取り組み、イノベーションについても書いてあります。これらのことを国民一人ひとりが自分ごととして考えていかねばならないとも記載されていますが、そのためには政府による正確な情報の開示も必要だと思います。 


エネルギー自給率が低い日本に必要なレジリエンスの強化

エネルギー基本計画のはじめに書かれているのは、日本の地政学的環境や自給率の低さによるエネルギー安定供給(Energy security)の脆弱性です。そのために特定のエネルギー源に過度に依存せずエネルギーの分散化や化石燃料輸入先の多角化の取り組みに努めてきたのですが、ロシアのウクライナ侵攻による影響で電力需給ひっ迫やエネルギー価格高騰が生じ、オイルショック以来のエネルギー危機が懸念されています。さらには原油の9割以上を依存する中東地域の軍事的な緊張に対する危惧も記されており、エネルギーの安定供給の確保に重点を置いた政策を考えています。日本のエネルギー自給率はOECD38カ国のうち37位と低く、いざという時にエネルギーを高額で買わなければならなくなる、あるいは入手できなくなる可能性が高いことが問題になっています。平時のみならずテロなどの有事にも備えて、どんな時でも安定供給体制が機能するような強靭性(レジリエンス)を高めていかなければなりません。レジリエンスについては国のみならず国内の電力各社が強化する取り組みを実施しています。昨年、能登半島地震や豪雨災害に見舞われた北陸地方では、北陸電力が大規模自然災害などに備えて対応力を強化し、自治体などの関係機関や他電力会社との送配電の連携をさらに強化する取り組みを行なっています。

3Eのうち環境適合性(Environment)については、日本の部門別CO2排出量の割合ではエネルギー転換部門(発電所など)が40.5%を占め、次いで産業部門24.4%、運輸部門17.8%となっていますから、エネルギーの使い方から根本的に考える必要があります。そして経済効率性(Economic efficiency)については、ここ3年の電気料金の値上がりは激しく、国が価格安定化に努めているとはいえ、エネルギー資源を輸入に頼る今の日本では世界情勢に左右されるので、今後の推移に留意が必要です。

基本政策分科会で半年に渡りエネルギー基本計画に向けた議論が行われており、ポイントは、広い視点で大局的かつ現実を見据えた方向性を示すことです。この難題をまとめ上げた案を基にして、1カ月ほどかけて個人、企業、団体などからパブリックコメントが募集されました。関連資料として提示された「2040年度におけるエネルギー需給の見通し」においては、電源構成の内訳として再エネ4〜5割、原子力2割、火力3〜4割が示されています。 


未来のために挑戦すべきエネルギー問題とは

電源構成の中で原子力の位置付けについては、燃料のウランは長持ちでエネルギー安定供給が図れ、化石燃料価格変動に影響を受けず安定安価な電気料金になり、また温室効果ガス排出ゼロなので気候変動防止に役立つというように、3Eすべてに貢献できます。現在日本に残っている既設の原子力発電所は33基。うち14基が審査を経て稼働中で、審査中やこれから申請する予定の発電所もあります。しかし管理方法を間違えたら大きな事故につながる可能性があり、高レベル放射性廃棄物の最終処分場もまだ調査中の段階です。2040年の電力をどうすべきかを考えるとき、S+3Eにすべて当てはまる電源はないのだから、やはり電源を組み合わせて使うしかないわけです。

さらにその先の2050年にはカーボンニュートラル目標があります。カーボンニュートラルはカーボンゼロではなく、排出されたCO2を閉じ込めるとか、植林や森林管理で±ゼロにすることでカーボンをニュートラル=実質ゼロにするという考え方です。カーボンニュートラルに向けた2030年、40年の取り組みがGX推進戦略(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略)です。ここでは省エネ推進から再エネ主力電源化など14の分野が挙げられており、すべてを実現するのはかなり大変ですが、少しずつでも国民全員の取り組みを奨励しています。


■GX推進戦略の14分野



ところで、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)は環境や気候変動問題と同一視されがちですが、SDGsは世界が抱えるさまざまな問題を解決することを原則としています。「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」は、17あるSDGsの国際目標のうちの一つであり、気候変動についても目標の一つでしかありません。化石燃料使用を批判する声があるものの、化石燃料はありとあらゆるものの素材として使われているので、もし使えなければ、労働の場が失われ、そのために貧困に陥る人が出てくるなど、SDGsの達成はできなくなります。だから環境だけに目を向けず、一人も取り残さないようにみんなの生活を守りながら、2050年のカーボンニュートラル達成のために、国はエネルギー問題においても全方位の取り組みをしようとしているのです。 






質疑応答

Q:長所短所を考えると電源はどういう組み合わせが一番良いのか。
A
:化石燃料はCO2の排出量が多くその中で一番少ないのがガスだが、ガスは世界中で争奪戦になっており、高額の取引になると、電気料金高騰の原因になる。再エネは天候に左右される上に、エネルギー密度(面積あたりのエネルギー発電量)が低いのがネックだ。太陽光、風力ともに火力、原子力発電所と比較すると広大な面積が必要で、どんなに技術が進んでも改良できない。メタンガス(天然ガスの主成分)がこれだけ世界で広く使われているのは、エネルギー密度が高く手軽に使えるからだ。しかし水素やアンモニアは安全に手軽に使えるレベルまでにはまだ時間がかかる。とにかくバランスが必要だ。

Q:現在停止中の志賀原子力発電所は、今後、何かのトラブルになった場合、住民は奥能登に避難するのが決まっていると聞いている。しかし去年の能登半島地震では主要道路が寸断されたまま復興が進んでおらず、逃げ場がなくなるのではないか不安だ。
A
:地震があっても必ず原子力発電所の近隣から避難しなければならないとは限らない。志賀原子力発電所の場合は、東日本大震災クラスの地震や津波の対策をしている。ただし100%の保証ではないので、残念ながら放射性物質が放出した場合は、必ずすぐに大事な情報が届くようにはなっている。能登半島の地形から陸地の避難は難しいだろうが、船による避難想定もあり、緊急を要する場合は自衛隊がヘリで運ぶ。また地域の自治体の避難計画があると思うので確認をしておいてほしい。

Q:エネルギーが足りなくなったら、私たちはどうすればいいのか。
A
:世界では停電が頻繁に起こり十分な電力が使えない地域が今もたくさんある。ウクライナのような戦争状態でなくとも、日常的に電力が不足している地域の人たちは、現実を受け入れ、電気が使える限られた時間内でできることをしている。もし将来、日本が必要な電力を使えない社会になったら、私もその現実を受け止め、できることをできるだけの時間でしていきたい。


村上 朋子(むらかみ ともこ)氏プロフィール

一般財団法人日本エネルギー経済研究所 電力ユニット 上級スペシャリスト
1990年東京大学工学部原子力工学科卒業。92年同大学院修了後、日本原子力発電に入社。新型炉開発・安全解析・廃止措置などの業務に従事。2004年慶応義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了、MBA取得。05年より日本エネルギー経済研究所に在籍。

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