自然災害が激甚化したというニュースが頻繁に報道され、その原因は地球温暖化だという言説が流布しています。果たして本当はどうなのか、杉山大志氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)にデータに基づいた客観的な事実についてお話を伺ったのち、質疑応答が行われました。

札幌は私の生まれ故郷であり、先祖は明治4年に内地から北海道に入植した最初のメンバーでした。寒すぎて食料が作れなかったせいで一族の半分くらいが最初の年に亡くなったという記録が残っています。今では北海道産の米がブランドになるほどですが、米が作れるようになった理由は、気候の温暖化以上に品種改良など生産技術が進んだからです。物理を学んでいた大学時代に私にとってヒーローだったアメリカの物理学者ファインマンは、物理で大切なのは必ず実験してデータを見て判断をすること、次に科学的なファクトを曲げてはいけないという言葉を残しています。気候については実験はできないため、その代わりに観測データを見ることが基本になっており、本日はデータを基にしたお話をしたいと思います。
近年、災害は激甚化しており将来もっと悪化するであろう原因が地球温暖化だとマスコミがよく報道していますが、過去の気象データを見ると災害は激甚化していません。確かに大気中のCO2濃度は増加しています。しかしCO2濃度が増えること自体は必ずしも悪いことではありません。CO2は植物が育つための大事な栄養であり、CO2を吸収して水と共に糖やタンパク質を作る光合成を行い、その植物を食べて動物は生きているのだから、むしろ増加は好ましいことだと言えます。日本の気温も確かに上昇していますが、地球温暖化は過去100年で見ると平均気温はわずか0.7°C、過去30年では0.2°Cとごくわずかな上昇です。それよりも暑さの原因の一つは自然変動であり、もう一つはヒートアイランド現象です。都市化が急激に進んだ東京の気温は過去100年で3°Cも高くなっています。都市では昼間の日光による熱がコンクリートやアスファルトに蓄えられ、夜になっても熱が残り続けているからです。
日本では台風の発生数は年平均で20〜25個くらいですが、過去60年くらいで頻発化は起きていませんし、激甚化もしていません。気象庁のHPに過去のデータが掲載されているのが確かな証拠なのに、それでも激甚化していると言う人、そしてそれを信じる人がいます。過去に日本に上陸した時の中心気圧が低い、つまり猛烈な台風のランキングを見ると、1950年代、60年代が多く、3位に入っている93年の台風以後はランキングされていませんが、その理由は不明です。また豪雨についても、過去45年のアメダスの観測による1日に400mm以上降った年間日数では増加傾向にありますが、気象庁は「大雨の頻度と強度の増大には、地球温暖化が影響している可能性がある。ただし、極端な大雨は発生頻度が少なく、それに対してアメダスの観測期間は比較的短いことから、これらの長期変化傾向を確実にとらえるためには今後のデータの蓄積が必要である」と報告しています。過去130年の日本の年降水量を比較すると、1950年代が毎年多く、その前後は多かったり少なかったりというように、時間とともに変わっています。しかも大気中のCO2が増加したのは1950年代以後ですから、近年の雨量増加は、地球温暖化のせいというよりは長期的な自然変動によるものと考えられます。
世界に目を向けると、気候変動の影響の例として挙げられるのがホッキョクグマです。氷が溶けて生息域がなくなり絶滅の危機に瀕していると言われているのですが、1960年代には1万頭くらいしかいなかったのに、2020年代には25,000頭にも増加しています。その理由は、ホッキョクグマは現地の人にとっては害獣であり、かつては毛皮も売れたため捕獲されていましたが、保護活動が盛んになったからです。また南の島がCO2増加による地球温暖化で海面上昇し沈んでしまうとよく言われていましたが、航空写真で70年前と比較するとマーシャル諸島の島では面積が増えています。島が沈まない理由は、海面上昇によりサンゴの中にいる生物の生息域も上昇し、サンゴのかけらが増えて白い砂浜ができるからです。
日本の環境省が発表している環境白書には、これまで私が紹介したデータは一切載っていません。掲載データは数少なく、令和2年版で掲載された「1970〜2018年の大災害による保険損害額の推移」では過去50年で世界の災害による被害金額の増加を示しています。しかしよく考えてみると、人口が増加し経済が発展したため、それに比例して被害金額も増加しているわけで、災害が激甚化しているから増加したとは言えません。こんなグラフを掲載するのはおかしいと指摘し続けてきましたが、最新の環境白書ではこのグラフさえも削除されてしまいました。世界でも例えば国連のグテーレス事務総長は、世界で災害が起きるたびに「災害は自然現象のせいではない、これは人類の化石燃料中毒の対価だ」と言っています。もちろん反駁する学者たちもいますし、経済成長したからこそ被害が増加しているだけです。そして地球温暖化や気候変動に関する評価を行うIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、独立しているとはいえ国連の枠組み内で活動しているのです。
気候変動のせいで世界は破滅的になる兆しがあると言う人がいますが、世界の社会統計を調べていくと、世界は住みやすくなっています。極端な気象による死亡数も気候に関連する死亡率も世界全体で激減しているデータが確かに存在します。なぜかといえば、気象予報は進化し、防災のための技術が進歩したからです。また世界の主要な作物の収穫量も右肩上がりです。その理由は肥料や農薬を使い、品種改良を行ったためであり、地球温暖化により減少する兆しは見られません。
このように気象観測データや社会の統計データを見ても、気候危機は見られないにも関わらず、危機だと発言する人の根拠はどこにあるのでしょうか。地球気候モデルでは、地球の大気をサイコロ型に切り取り気候システムをコンピュータで計算しますが、人によって気温上昇の計算結果が全く違ってきます。海から蒸発した水が雲になる時に、高いところでできるか低いところでできるかの計算値を一つ変えるだけでも結果が変わりますし、雲ができるためには空気中に核になるちりが必要ですが、そのちりが街からも森からも火山からも出るなど、かなり複雑なシミュレーションを地球全体で向こう100年間も計算しなければなりません。ですからその結果が本当に将来の気候を予測できるのかという話になってきます。CO2濃度が今の2倍になったら気温は何度になるかについても、1.5°Cの人も4.5°Cの人もいるというように、3倍もの開きがあります。太陽から受けたエネルギーを地球が赤外線として宇宙に放出する際に、CO2はその熱を吸収し地球の温度を上昇させて地球を温める効果があるというのは意見が一致していても、温まった時に雲がどこにどのくらいできるのかは、人によって答えが違います。
さらに言えば、将来を予測するモデルは必ず過去を再現していると誰もが思っているはずですが、実は、過去については全く再現できていません。過去50年にわたる上空の気温をシミュレーションのモデルで表したら下のグラフになりました。複数のカラーの線がさまざまな計算式でモデル計算した結果で、太い黒線の衛星観測の実数値より倍くらい温暖化することになっていました。つまり過去がこれだけ違っているのだから、今後の将来予測もそれだけ違ってくると想像できると思います。にも関わらずこうしたモデル予測が将来の予測だと刷り込まれているのです。海水表面温度についても同様に、シミュレーションモデルでは現実の倍くらい高くなっている場合があり、皆さんがよく耳にする予測というものは、そういう性質があることを知っておく必要があります。
地球温暖化が問題視されたのは今から40年くらい前ですが、温暖化の悪影響はかなり誇張されており、かつて2020年になったらこんな悪いことが起きると言う予測を立てた人がたくさんいました。例として挙げると、元米副大統領だったアル・ゴアが『不都合な真実』(2006年)というドキュメンタリー映画の中で、2020年になるとアフリカのキリマンジャロには雪が降らないと言っていましたが、2020年に実際に現地に行くと雪は確かにありました。多くの予言が外れていますが、今後も外れるとは限らないものの、不吉な予測はまゆつばと考えた方がいいでしょう。
日本政府は2050年にCO2をゼロにする目標を掲げています。しかし石炭、石油、ガスといった化石燃料を使わなければエネルギーコストは高額になります。さらに政府は10年でグリーン・トランスフォーメーション=GXに150兆円の投資を行い、これは国民1人あたり120万円にも相当します。これだけ投資してもまだCO2はゼロにはなりません。では高いお金をかけてCO2削減を試みた結果、一体気温は何度下がるのか、その計算は簡単にできます。
産業革命以降、人類は2兆トン以上のCO2を排出してきており、気温は1°C上がったとIPCCは発表しています。累積のCO2排出量と気温上昇は比例していて、1兆トンあたり0.5°C気温が上がる計算になります。日本のCO2排出量は年間10億トンですから、1兆トンの1/1000。つまり気温は0.5°Cの1/1000である0.0005°Cだけ上がる計算になります。2050年までの25年間でCO2をゼロにすると、気温はどれだけ下がるか計算すると、0.006°Cしか下がらないことになります。費用対効果を考えると、CO2削減に精力的に取り組むことは日本にとって割に合わない政策に思えてくるのです。
質疑応答
Q:なぜメディアは地球温暖化を煽っているのか。
A:地球温暖化対策で利権ができていることが大きな理由だと思う。気候危機になるとでも言わなければ政府のカーボンニュートラル政策は正当化できないし、予算確保のためにも必要だ。またCO2規制で利益を得る人もいるし、その人たちに融資する金融業界も儲かる。大学の先生も気候危機のために研究するといえば予算が付くし、結果を出せば出世もできる。メディアもそういう学者を利用する構造ができている。
Q:都市熱を減らすためには、街路樹や公園への植林などが有効ではないのか。
A:街路樹は都心に植えると夏の暑さが和らぐのは実証されている。その一方で、札幌は都市熱のおかげでずいぶん暖かくなっていて、冬の最低気温上昇に効果的だ。そもそも暑さより寒さで亡くなる人数の方が30倍も多いため、都市熱で冬の最低気温が上がると、人間の健康には良いという側面もある。
Q:CO2の濃度を下げるための森林の効果は。
A:下げる効果があるのは確かだ。ただし樹木を少し増やしただけでは濃度はさほど下がらない。
Q:昭和30年代半ばには、氷河期が来るというのがトレンドだった記憶があり、いつ頃から温暖化がトレンドになったのか。
A:確かに1970年までは地球は寒冷化すると言われていたが、世界的に地球温暖化が言われ始めたのは1980年代だ。
Q:今年の猛暑を体験し、札幌に住み続けるならこれから冷房は必需品になるだろうか。
A:この2、3年の世界の気温上昇は海底火山の噴火の影響とも言われているが、来年にはそろそろ影響がなくなるだろう。また10年規模の海流の変化や太陽活動の変化による影響も有力な説だ。札幌の場合、都市熱で気温が上がっているのは確かではあるが、自然の変動で来年は暑くなるか寒くなるかはわからない。
一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
1969年北海道生まれ。91年東京大学理学部物理学科卒業、93年東京大学大学院工学研究科物理工学専攻修了後、一般財団法人電力中央研究所入所。95年から97年までオーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA)研究員。2017年よりキヤノングローバル戦略研究所上席研究員、19年より現職。温暖化問題およびエネルギー政策を専門とする。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、経産省産業構造審議会等の政府委員、米国ブレークスルー研究所フェロー、慶應義塾大学特任教授、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術委員、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)専門委員を歴任。産経新聞「正論」レギュラー執筆者。著書に「亡国のエコ」(ワニブックス)「15歳からの地球温暖化」(扶桑社)「SDGsエコバブルの終焉」(杉山大志(編著)川口マーン惠美(著)掛谷英紀(著)有馬純(著)/宝島社)、「データが語る気候変動問題のホントとウソ」(電気書院)など。