
ウェルビーイングという言葉を最近よく耳にします。この言葉と向き合ったのは2023年、豊田市第9次総合計画策定に関わった時です。ウェルビーイングは世界保健機構の憲章で初めて言及され、「個人や社会のよい状態」と定義されています。
環境基本法に基づき策定された第六次環境基本計画(2024年)は、ウェルビーイング/高い生活の質を最上位の目的に掲げ、環境の質を上げることで経済社会が成長・発展できる循環共生型社会の構築を目指しています。一方、ISO25554は、ウェルビーイング重視社会への転換を促す国際規格です。高齢化先進国の日本主導で2021年に議論が始まり、世界で使えるガイドラインとして2024年11月12日に発行されました。
ところで、誰かの犠牲によって作られた商品を買いたい人はいるでしょうか。エシカル消費は、消費者が社会課題の解決を考え、自分だけでなく大切な人や困っている誰か、未来世代や地球に想いを馳せ、課題に取り組む事業者を応援し消費すること。しかし生産と消費が分離した現在の社会構造は、双方の考えや取り組みが見えづらい側面があります。
日本で小売りされている国内産衣類は、わずか2%。私たちが購入する衣類の殆どは海外で作られています。衣服1枚あたりの価格は、1990年代の半額以下と大幅に安くなっています*1。
バングラデシュの首都ダッカで2013年4月24日、8階建てのビル「ラナ・プラザ」が崩壊しました。数千台のミシンや大型発電機の振動がビルの崩壊を誘発し、死者1,134人、負傷者2,500人以上のファッション史上最悪の大惨事に。多数の若い女性が身体障害者となり、今も働くことができず苦しんでいます。世界展開する日本や欧米のファストファッションが、途上国の劣悪な労働環境に依存し、利益を上げている状況が浮き彫りとなりました。
ファッション産業は石油産業に次ぐ世界で2番目の環境汚染産業と、国連貿易開発会議は位置づけています。温室効果ガス排出量の2~8%が繊維産業によるものと推定。年間930億㎥の水を使い、これは500万人のニーズを満たすのと同じ量です*2。合成繊維は生分解されないため、環境中に残り続けます。洗濯で排出された繊維がマイクロプラスチックとなり、海洋汚染の一因になっています。綿などの天然繊維は生分解されますが、生産に大量の水や農薬を使います。製造から廃棄に至るライフサイクル全体で、環境負荷低減が重要です。
企業活動や消費行動は、社会に大きな影響を与えています。双方がつくる責任・つかう責任を果たす。最近は古着やカーテン、羽毛布団を回収し、リサイクルを越えたアップサイクルを行う事業もあります。消費には責任が伴います。自分の選択が及ぼす影響に関心を持てば、自然との関係性を築き直すチャンスになります。誰も犠牲にしない商品を知り、選び、買う。エシカル消費は、思いやり消費とも言われています。 未来世代に幸せと持続可能な社会を繋いでいけますように。
*1 出典:環境省サステナブルファッション
https://www.env.go.jp/policy/sustainable%5Ffashion/index.html
*2 出典:国連環境計画(UNEP)
(2025年8月)