今年、世界は石油経済から金による経済に逆戻りした。このことをほとんど日本のマスコミでは報道していない。それが何を意味するか分かってないからだと思う。ことの成り行きは1971年8月15日。ニクソン大統領の緊急声明にさかのぼる。
「アメリカは今後、金とドルの兌換を行わない」。政策を具体化したのは15歳までドイツのゲットーでの貧しい生活を強いられていたユダヤ人「ヘンリー・キッシンジャー」である。ドルの価値を「金」が裏打ちしないとなれば、ドルは暴落し、ベトナム戦争で疲弊したアメリカは経済危機に陥ることを誰もが予想した。さらに、アメリカにはもはやドルを担保できるだけの金塊が無いことをも暗示していた。
キッシンジャーは次のカードを切った。「中東の原油はドルでしか取引をしない」という国際ルールである。世界は必死にドルを手に入れる時代が到来した。中東の国は「米ドル」を持ってきた人にしか原油を売らないということは米国と仲良しの国のみが経済発展できるという世界ルールである。こうすれば米ドルが暴落することはあり得ない。
さて、こんなマジックをどうやって実現したのだろうか?エネルギー問題の本質がここにある。中東の盟主サウジアラビアの国王に対してこの約束を守ってくれるなら米軍がサウジ王家と油田を守り、王家の存続を保証する。そのため油田の周りに米軍が駐留するというものであった。このカードに世界はビックリし、中東の国々は猛烈に反発し、戦争に発展しオイルショックを起こして西側諸国をけん制したが後の祭りであった。結果として中東の原油はアメリカの手に渡ることになる。
さて、キッシンジャー(当時50歳)とサウジアラビアの約束は50年間という時限付きだった。それが終わったのが今年(2024年)6月である。ユダヤ人であるキッシンジャーが下した命令に中東の国々は50年間忠実に従い、一つの時代が終わりボールは米国から中東の国へと渡った。
その結果どうなったか。世界は元の金本位制に戻るということであった。いま、世界の金塊は中国・ロシア・中東に集まっている。すでに日本では大量の金を購入できない。イコール「円」を担保するものはない。これらの国の通貨は相対的に強くなる。サウジアラビアの声明では「もう米ドルでは原油を売らない」とのこと。中国「元」での取引が始まる。
中東が50年間の約束を果たしたことを見届け、年末にキッシンジャーは亡くなった。15歳でガス室の迫害から逃れてアメリカに渡り享年100歳だった。死因は公表されていない。エネルギー問題の理解はまず世界で起きていることを知ることからだと思う。
(2024年10月)