私はこう思う!

INDEX

超高齢社会の住み家とエネルギー消費

槇村久子氏 hisako makimura
京都女子大学 宗教・文化研究所客員研究員

最近、高齢者向け住宅のお誘い広告が増えた。日本の介護保険制度が始まる前、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなど北欧の高齢者福祉と住宅や施設を学びに行った。日本では北欧風の考えを取り入れ、当時、病院併設の有料老人ホームができた。

日本よりずっと早く高齢社会を迎えた北欧では、地域や国土に散在する個別住宅から集住するまちづくりを行った。福祉サービスの利用だけでなく、インフラ整備も集約できる。エネルギー供給・消費の観点からも良いのではないかと考えられる。

また随分前の話である。自分の生活から、共働き世帯は都市部の集合住宅に住むまちづくりが良いと考えた。郊外の戸建て住宅からバスで駅、さらに鉄道で都心部の職場へ。交通にかかるエネルギー消費と体力や時間の消費が大きい。今は都市部に高層マンションが立つ。

日本は2007年に超高齢社会を迎え、現在は人口急減、超高齢化が進んでいる。夏場に消費電力を抑えようと「高齢者の皆様、昼間は冷房のある近くのショッピングセンターでお過ごしを」とキャンペーンがあった。高齢者のいる世帯では年間エネルギー消費量が多い。

高齢世帯は戸建て住宅の割合が高く広い。設備が古く、在宅時間も多い。戸建て住宅では、集合住宅に住む世帯よりエネルギー消費は多い。世帯主が75歳以上は2020年に827万世帯で1995年の約3倍だ。

「家庭部門のCO2排出実態統計調査」によれば、平均的な住宅条件が、戸建て住宅120㎡築20〜30年、集合住宅が延床70㎡とすれば、高齢者世帯では電力消費量は約2~3割多くなるという。高齢者世帯も集合住宅に住む方が、エネルギー消費の面からも良いことが分かる。

きっかけは、女性のまちづくりを共にした友人が、寒い朝方に自宅の廊下で倒れていたことや、自宅周りの女性たちや夫婦も見なくなったからである。住み家の共同はエネルギー消費だけでなく、人との関わりによる安心があるからだろう。この状況は全国の人口動態や空き家問題、都市構造の問題など複雑に絡み合っている。私はまだ庭の樹々や草花、鳥や虫たちの変化を楽しめないのは寂しい。都市に緑と自然を!


(2025年5月)

ページトップへ