「復活」という言葉に最近弱い。年齢を重ねたせいもあると思う。2024年10月20日、全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)の統一予選会であるプリンセス駅伝の1区に登場したのは、伊澤菜々花さん(33歳)だった。伊澤さんをレースで見たのは4〜5年ぶりで、驚いた。中学、高校とずっとトップを走り、順天堂大学を卒業後は実業団ランナーとして活躍。しかし故障に泣き、母校の順天堂大学に戻ってコーチをしていた。
この日、伊澤さんは久しぶりの現役復帰で、エース級が揃う1区を走った。そして見事、区間賞に輝いたのだ。独走のその走りは以前にも増して力強く、美しく、圧倒的な強さが見ている人の心を奪った。その結果、チーム(スターツ)を全国大会へと導くことに。伊澤さんと同級生で、子どもの頃からずっとライバルだったのが、同じ豊橋市出身の鈴木亜由子さん。「すごく勇気をもらいました」と、鈴木さん。くすぶっていた鈴木さんの心にも火がつき、彼女はクイーンズ駅伝で大活躍をした。伊澤さんが人知れず、どれだけ涙を流し、努力を続けてきたかを思うと胸が熱くなる。
そして13年という時間を乗り越えて、復活を遂げているのが女川、島根の原子力発電所だ。歩みを止めずに、一歩一歩進んできたことが実を結んだのだと思う。東日本大震災の後、私は東北電力が主催したウオーキングイベントで、女川町の皆さんと一緒に歩いた。仮設住宅から参加した方の中には「何のために生きているのか分からない」と話す人もいて、どう声をかけていいのか分からず、でも「一歩一歩ですね」と歩きにも人生にもとれる言葉をかけたのだった。
石巻市でも駅伝大会が開催され、皆で絆を深めあったことを思い出す。島根でも発電所構内で行われた駅伝大会に参加し「ご安全に」と言ってスターターを務めた。正に皆さん、駅伝のようなチームワークでがんばってこられたのだと思う。東北、山陰の冬の電力需要に、エースが復活したことが本当に嬉しい。
(2024年12月)