佐賀県玄海町の脇山町長は、5月10日に「文献調査」を受け入れると表明した。原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物の、最終処分場の選定に向けたプロセスの第一段階の調査だ。調査の受け入れは、北海道の寿都町、神恵内村に続く三例目で、原子力立地の自治体としては初めてのことだ。
玄海町議会の調査請願採択、国からの調査申し入れを受けての、苦渋の決断だったという。脇山町長は、適地が見つかるための呼び水になったらありがたいとも語った。処分場適地は、広範な候補地から選定するのが望ましい。そのためには、特定地域の問題としてではなく、全国的な議論、共通認識に広げることが必要だ。それがまだ充分ではないとの認識が、受け入れ表明につながったと思う。脇山町長は、全国原子力発電所所在市町村協議会でも、全国的な議論の広がりを期待する旨を訴えた。
玄海町には、講演やシンポジウムで何度も訪れている。町長、議長、町の職員の方々と、幾度か意見交換の機会を持ったこともあり、原子力立地の責任、矜持、覚悟を持った自治体だと認識している。それだけに今回玄海町が現状に投じた一石を重く受け止め、その問題提起が全国的な議論、共通認識の足掛かりとなることを期待したい。
最終処分場については、資源エネルギー庁とNUMO(原子力発電環境整備機構)が、長年にわたって理解促進活動を続けてきている。過去には僕自身もお手伝いしたことがある。近年では、対話型説明会という少人数での対話形式で、きめ細かい理解促進を目指しているし、教育現場の先生たちの講習会、SNSでの情報発信なども行なっている。
しかしまだ国民全般の関心事、現実的なテーマになっているとは言えないだろう。とにかく不断の努力を続けるしかない。三つの自治体が名乗りをあげてくれた今こそ、国が前面に立って、全国的な理解促進活動を更に充実させてほしいと思う。6月10日NUMOは、玄海町の「文献調査」を開始したと発表した。
(2024年6月)