「ガー、ピーピー」。午前3時半、重機の音と黄色い点滅ランプが寝室に入ってきて、今日も雪かとうんざりする朝を迎える。
近くの会社の従業員駐車場に除雪車が入ると、私も早めに起きて支度を整え、家の周囲の雪かきに出る。今年の金沢は大雪というより、最長寒波と称されるように2月に入ってからダラダラと降雪が続き、ひどい日には朝昼夕晩、除雪に追われる。雪をよけるだけなら頑張れるが、問題はその捨て場所。街中なので用水は暗渠化し、道は狭くて路肩に寄せると車の通行ができず、庭に入れるにしてもどんどん高さが増し、雪を放り上げる作業がまた重労働なのだ。
この大量の雪、何かに利用できないだろうか、と考えると・・・あった! 藩政時代から続く「氷室」。
冬の間に雪を貯蔵してできた氷を、夏には徳川将軍家にも献上していたとか。多くの氷室が作られたが、昭和に入り製氷機の普及でほとんど姿を消したのを、昭和61年、金沢の奥座敷といわれる湯涌温泉で復元された。氷室小屋は間口4メートル、奥行6メートル、深さ2.5メートルの茅葺きで、毎年1月の最終日曜日に関係者や観光客が雪を仕込んで踏み固め、7月1日の「氷室の日」に、切り出した氷を石川県知事や金沢市長、加賀藩下屋敷があった東京都板橋区、目黒区に贈呈する「氷室開き」が行われる。
暖冬で十分な雪が確保できない年や、予想以上に雪が解けて氷の量が少ない年もあるが、こうした先人の知恵を研究して氷室としてだけではなく、厄介な雪を自然エネルギーなどとして利用できないか。もっと北の地域ではいろいろと利用はされているようだが、北陸での実用化はどうなのだろう。
そんなことを考えながら、今から雪に埋まったベランダのBSアンテナとエアコン室外機の掘り出し作業をする。暖かい部屋で海外ドラマを見るのは、雪で外出できない日のお楽しみ。
ところでニュースで「雪下ろしをする時は命綱をつけて」ってよく聞くけれど、雪に埋もれて何もない屋根の上で一体その綱はどこに結ぶのだろう。誰か教えて!
(2025年2月)